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2013.04.23 Tuesday

【ハリソンズ・オブ・エジンバラ】150周年に寄せて


人間は背丈だけ伸びるわけではない。
身体が成長すれば、
本尊のこころや魂も
同時に成長する。
怠けてはいけないよ。

シェイクスピア【ハムレット】
第一幕 第三場より。
福田恒存訳

ヒロイン=オフィーリアの兄、レイアーティーズは、
うぶな妹の身を案じました。
兄はというと、
しばし祖国を離れフランスへと出立します。
宰相である父は、我が子にはなむけの処世訓をおくりました。

〜つきあいは親しんで狎(な)れず。
が、こいつはと思った友達は離すな。
お調子ものとやたらに手を握って、まめをこしらえるではないぞ〜

〜他人の意見には耳を貸し、用心せねばならぬが、
万一まきこまれたら、
そのときは目にものを見せてやれ〜




〜それからと、
財布の許すかぎり、身のまわりには金をかけるがいい。
といって凝るのはいいが、
華美は禁物〜

〜帆は風をはらみ、お前を待っている。
己に忠実なれ。
さ、乗り込んだり〜

運命のきざしが影を落とすなか、
仕合せを願いあう家族の慈悲が偲ばれてきます。
400年以上まえの戯曲、
電燈もマイクもない時代に、舞台は野外。
それは、かがり火の晩だったことでしょう。

時を経ても朽ちない、紙面の遺跡。
こうした家族の足跡がある一方、
現在でさえも、
新たに歴史を刻みつづけているファミリーがあります。




英国の毛織物産業
さかのぼること、ヨーロッパ列強間の覇権争いにおいて、
15世紀以降、
大航海時代の無敵艦隊ことスペインと英国が明暗を分けたのは、
自国の産業基盤の差だったと言われます。
三角貿易、のちの東インド会社設立。
英国興隆の歴史とは、
自国の毛織物産業という礎に支えられたものでした。

ではその発展の契機というと、
市民社会の変容が波寄せます。
中産階級の台頭。
農民と貴族の間に位置する地主階級、
gentry=郷紳とよばれる層。
領地内に労働者を集め、毛織物のマニュファクチュア経営に乗り出しました。
こうした統治が成長し、
やがて政治宗教のうえでも、ピューリタン(清教徒)革命へと繋がります。




歴史に裏打ちされた英国生地
質実の代表格とも位置づけられるブランドが、
今年創業150周年を迎えた【Harrisons of Edinburgh】
先頃、都内で記念レセプションが開催されました。

ハリソンズの歴史や特色については、
過去に当店のブログでもご紹介済み。
ご参考までに。
http://northern-t.jugem.jp/?eid=12

現在では英国最大規模の服地商グループ、
Lear Browne & Dansford 社の傘下に入り、
引きつづき、ロンドン・サヴィルロウをはじめ、
世界じゅうの注文服店から
確かな信頼と人気を博しています。

レセプション当夜、
会場にはハリソンズ150年の歴史を物語る記録資料、
貴重なアーカイブの数々が
英国から到着し展示されました。
かつて繊維が基幹産業だった当時、
大規模な生地ストックの写真や生地台帳に、
さながら博物館の趣き。




現オーナ一である、ダンスフォード社一族の歴史も、
古くは創業1895年。
ならびに、日本の輸入元でありこの度の主催者でいらっしゃる、
マルキシ株式会社様
代々続く老舗であり、
その道の、リーディングカンパニーにほかなりません。

歴史の営みを物語る記念レセプションに、
乾杯の祝辞を述べられたのは、ティム・ヒッチンズ駐日英国大使。
流ちょうな日本語を交えながら、
日英間の歴史と発展について、じつに活き活きとしたもの。
外交のプロフェッショナル。
その一端に触れられとことは我が一生の財産です。

ところで、このレセプションには、
ハリソンズをはじめとする英国のさまざまな代表的ブランドが出展されていました。
英国車、アストン・マーティン。
最新型から往年のクラシックカーまで、
三役揃い踏み。




DB5
夢の世界です。
クルマ好きも、映画好きも、
1960年代にタイムスリップ。
ご一緒に歌いましょう。
ゴールドフィンガ〜♪♪




この日は日中が20度以上という、さながら初夏の陽気。
夜気もあたたかく、絶好の祝賀日和でした。
さすが主催者様のご人望、空も味方につけましたね☆
また、
宴もたけなわの頃、
英国の文化に造詣の深いジャーナリストの長谷川善美氏と
英国来賓の方々とのトークショーが開催。
【Britishness】
英国らしさ、気質とはなにかについての
示唆に富むお話を聴くことが出来ました。
【Taste】
後にも先にも、この一語がキーワード。
目に見えないテイストさえ認め合える関係、
それが肝心だと教わった気がします。




英国の老舗、名門ブランドによる
晴れがましい競演。
目の保養、こころの滋養になりました。
お世話になっている方々と一堂に会することもできて、
感無量。
そして帰り道、ひとり考えます。

ではノーザンテイラーは・・・?
当店には歴史も由緒もありません。
あるものは、情熱と仲間。

確かな生地を取り揃え、
技量を持つ職人の方々に支えられ、
入念な見立てにより、
お客様の一着をご提供するノウハウ。
この矜持をもち、前進して行きます。

記念レセプションご招待と、
感慨新たになるきっかけを与えてくださった
マルキシ社の岸社長殿、
関係各位の皆さま、誠にありがとうございました。




さて、
翌朝、再び会場の周辺に赴きました。
なにしろ散歩が趣味なので!!
東京の都心は起伏に富んだ地形から、
坂のゆたかな街という印象があります。

地名にも関連し、
「〜坂」、「〜谷」、そして「〜台」と聞いただけで想像が膨らむほど。
東京ご出身の方には当然過ぎて失笑されるかもしれませんが、
田舎ものには、書物の世界をタイムスリップで疑似体験できる、
舞台のような憧れ。

漱石が通った神楽坂、
桂太郎が見渡した茗荷谷(みょうがだに)、
幸田露伴が駆けあがった駿河台など・・・




しかし・・・
これまで自分の気の向くまま歩いてきた街とは、
いささか趣きが異なりました。
坂を上がると、
不思議な落ち着きと
そしてため息が漏れます。




もとは諸藩の大名屋敷が存在した地区。
その立地と豊かな緑を活かして、
現在では各国の大使館や庭園マンションが佇みます。
まるで都心にいることを忘れてしまうほど。
深閑としたなかに、鳥のさえずりが残響。




高層ビルと古い寺院が混在し、
手を伸ばせば東京タワーまで。
世の移ろいが見渡せる、
なんとも贅沢な眺望。




調べてみますと、
このあたりの台地はかつて
歌川広重による【江戸百景】にも描かれたそうです。
題して、月の岬。
湾を埋め立てる以前は、
江戸前がずいぶんと近かったのですね。




朝の静けさにもの思い、
ゆっくりと坂を下りました。
そして今、
日常に戻っております。




英気を養い、
ここ北海道だからできることを
日々探究。
新たなご縁に恵まれますように。

かさねまして、
この度はありがとうございました。
ならびに、
【Harrisons of Edinburgh】

栄えある150周年、誠におめでとうございます。




札幌元町 ノーザンテイラー

http://northern-tailor.jp/

2013.04.16 Tuesday

不在のお知らせ -2013年4月-





平生
当ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

この度
4/18(木)、/19(金)
出張のため、
不在とさせて頂きます。
ご不便をおかけしますが、何卒ご了承願います。

4/20(土)からは平常どおり営業。
お問い合わせ、ご来店を
はりきってお待ちしております。




東京都内、
ご注意ください!!

 
札幌元町 ノーザンテイラー

http://northern-tailor.jp/

2013.04.10 Wednesday

2013春 - スーツ生地とスタイリング


四月です。
ようやく雪が解けました。
それにしても、
今年の寒さは堪えましたね。
無事乗りきったことに感謝しつつ、
ひと言申し上げます。
冬、あばよ〜


春、待ってました〜!!




あちらこちらで雪囲いも撤収。
むしろを解かれると、
こころなしか木々の枝も、伸びをしているようにさえ見えます。
まだ風は冷たいものの、
旧北海道庁の広場では、
憩う人たちの姿に、軽装が目立ちます。
新緑が待ち遠しいこの頃。




着水の つたなき鴨を しんがりに


前山松花の句集「帰命抄」より。
ゆく春は、巣立ちがあり、旅立ちがあり、
悲喜こもごも。
例えば秋は人恋しい季節と言われますが、
春は何でしょうか。
北国の暮らし、この時季には水辺が恋しくなってきました。
川も池も、
雪が解けてようやく近づけるようになります。

さて、お待たせいたしました。
新年度、ノーザンテイラーも季節の衣替え。
風に吹かれて
瑞々(みずみず)しく行きましょう♪♪




当店でお取扱いする生地のなかから、
この時季おすすめのものをいくつかご紹介させて頂きます。
まずひとつ、
HARRISONS OF EDINBURGH

この度ハリソンズの定番シリーズ、「フロンティア」が刷新。
質実剛健な英国生地という代名詞に相応しく、
質量充実、全90点以上のバリエーション。




厚地の平織が特徴。
季節向きは春夏にかけての合着に分類されますが、
ビシッとハリのある質感は着込む甲斐満点。
ゆえに通年で愛用されていらっしゃるファンも多いかと。
こと弾力にかけては優れモノ。
シワに負けません。
タフなビジネススーツとして、出張にも頼もしいかぎり。




スーツというと無地やストライプ柄がポピュラーですが、
格子柄(ウィンドウ・ペーン)もおすすめ。
お仕事柄ダークスーツを着られる方も、
紺地、グレー地をもとに窓枠を掛ければ、見目に通気性ある雰囲気。
風をよぶよう。




つづきまして、
EDWIN WOODHOUSE
織元の雄、E.ウッドハウスから、こちらも定番シリーズ
「サマー・パナマ」が刷新されました。
軽やかさと、しなやかさ。
サマーウール決定版のひとつとして、ながきにわたり
好評を博すコレクション。




サマーウールと言いますと、
一般に薄地の平織をさします。
熱帯地方の厳しい暑さにも過ごせるよう、
さらりと乾いた質感、肌触りが特徴。
ウール・トロピカルとも言われる由縁。




柄にもちょっとした工夫。
ストライプでいうと、
このように点で交互(オルタネイト)に並べたものがおすすめ。
色合いだけでなく、
微細な織り柄の間(ま)が、そよ風の通り道のように
清涼感を誘います。




色の濃淡や織りの質感は、
生地見本だけではいま一つ判然としない場合もございます。
しかし、ご心配なく。
ノーザンテイラーでは、
前述の生地ブランドをはじめ、
H.LESSER & SONS ,  SCHOFIELD &SMITH
DORMEUIL , SCABAL
LORO PIANA , CANONICO 等々
英国、イタリアをはじめ
内外の良質な生地を選りすぐりでご用意しております。
実際に反物をお手に取り、
肩にかけて、比較ご検討ください。




【ALTERNATE GREYISH BLUE STRIPE SUIT】
春らしく、
爽やかな一着をご紹介します。
ついでに伸びた髪も刈って、
スッキリと行きましょう。
下着もおニューで!!




紺ではなく、青に近いです。
どことなく掠(かす)れた柔らかな色調から、
グレイッシュ・ブルーと言いますか。
この時季のスーツ生地におすすめ。
交互のピンストライプにより、
曲面の稜線はグラデーションが引き立ちます。




ツータックのゆったりとした着心地を好まれるお客様。
全体のシルエットは変えなくとも、
細部はその時々の気分に応じて。
今回は軽やかに裾口をシングル。
靴も穴飾りのセミブローグから、
きりっと一文字のキャップトゥに履き替えでしょうか。




裏地は背抜き仕様。
こちらもお好みですから、
たとえ夏物であっても総裏仕様が可能です。
また、トラウザースには裏地(ひざ当て)もございますので、
お申し付けください。
昔のひとはズボン下=ステテコ履きますよね。
ジャパニーズ・クラシカル!?
こんどやってみましょう〜




おかげさまで、
お客様にはさっそく春夏生地のご好評を頂き、
誠にありがとうございます。
一着、一着、
責任と情熱を持って取り組ませて頂きます。
どうぞご期待ください。

次回はジャケット生地編をご紹介。

是非お楽しみに☆


札幌元町 ノーザンテイラー
http://northern-tailor.jp/

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