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2012.09.28 Friday

仲秋の月見夜話2012

  
旧暦の八月朔日(ついたち)から
数えて15日目。
今年の名月は、いよいよ30日の日曜日。

調べて見ますと、
ちなみ去年は12日、おととしは20日でした。
自然現象と暦(こよみ)のしくみについては、
いまだによく理解できません。
同様に
この時季の悩ましげな空模様も、
うつりにけりな いたづらに ??

月にむら雲 花に風




おんなごころと秋の空


身につまされて・・・
ヒューヒュー

堪(こた)えます。

と言いますか、
懲りてませんッ!!
男の性(さが) 笑




かつて、
「月に吠える」と題した青春の詩人がいましたが、
それが似合うのはせいぜい20代まで。
いい歳こいて地団太踏むのも、
ちょっとハンカクサイですから。(北海道弁)

浮世に
月夜に
泰然と
紫煙を燻(くゆ)らせる大人にあやかりたいものです。




【HOLLYWOOD PORTRAITS】

CLASSIC SHOTS AND HOW TO TAKE THEM
Copyright Collins & Brown Limited

恒星(スター)の肖像。
サイレント映画からトーキーへ移行した1930年を境に、
世を照らした仄(ほの)明かり。

スチール写真に宿るその光度は、
未曾有の大戦による後遺症、世界恐慌のなか、
暗雲垂れこめる闇夜のともし火となりました。
月が反射するように。




本書では、シネマ隆盛の時代を支えた
撮影機材の技術進歩、
そして人知の創意工夫が紹介されています。
1931年、
イーストマン・コダック社によるPanchromatic (全整色感光)のフィルムが、
多くの撮影スタジオで採用されると、
白と黒が織りなす灰色の陰影は、
実際に肉眼に映る像により近づきました。




詳しくは・・・
難しくてよく分かりませんッ!! 爆
感じるままに、ページをめくればいいんです。
ソフィア・ローレンのまなざしを、
悩ましげなおみ脚(あし)を、
脳内レンズで、しかとフォーカスしてください☆
それにしても、
モノクロフィルムにブルネットはよく映えますね。




ローマ生まれのナポリ育ち
誘うような唇と野性的な瞳は、中東サラセン人の血がブレンドされた色濃さ。
「イタリアが生んだ最上の輸出品」
そして「太陽」と称えられた当時24歳の熱気は、
カラーフィルムでは眩しすぎます。
照明の配置、光度の加減を駆使して、
一転、冷気冴える瞬間が記録されました。
動から静へ
陽から陰へ




本書を眺めるたび、そうした気分になるのですが、
それはどこか、角が取れるような滑らかさ。
気はながく、心はまるく、腹たてず・・・
親によく説教されたものです。
私は短気なので、
キレそうなときにそっと思い出しましょう。
ソフィア・ローレンの肢体を!!
ちがうか

自然の満ち欠けがひとの心をうごかすように、
襟元の満ち欠けにも、心模様が現れるような。
ということで、
お客様にご注文頂いたラウンドカラ―のシャツをご紹介します。




コンサルティングの第一線で活躍されるお仕事柄と、
柔和なお人柄に相応しいシャツができました。
普段はボタンダウンシャツをお召しになることが多いなか、
ナチュラルショルダーのスーツにすんなりと調和。

ラウンドカラ―にはチェックのタイが似合いますから、
ストライプから替えてみるだけで、
なんとはなしに週末気分が浮き立ってきませんか。
良質なシャンパンの口当たり、角のとれた気泡が香るよう。
なんて・・・
知ったかぶり笑




月の話つながりといえば、
これを外すわけにはいきません。
【PAPER MOON】1973
旅は道連れ、世は情け。
ロードムービーという題材は、そこに流れるひとの機微は変わらずとも、
アプローチの仕方は時代で変わります。
昔はすべてがスタジオ内で撮影されました。
後に大々的な野外撮影セットが組まれました。
じゅうぶん、その気にさせられますよね。

やがてその反動から、
ヌーベルヴァーグやニューシネマの潮流が押し寄せ、
一切が撮影スタジオ外によるライブ。
リアリティーが全てだったことも。




本作の特徴は、
それらすべての時代の要素をミクスチャーしているところです。
舞台は1930年代のアメリカ中西部。
製作当時の1970年前半、古き良き開拓の名残りをもとめて
全編に渡り中西部各地で敢行されたロケには、
実際の街並に時代劇のセットをこしらえて臨場感がよみがえりました。
一コマも妥協しない完成度は、
往時の習慣にならい、
街じゅうの路上駐車を縦列ではなく、斜めに並列させたほどの徹底ぶり。




ただ昔の焼き直しではありません。
新たな子役のスター像が生まれました。
大人顔負けの度胸と危うさ。
ランニングシャツを着たボーイッシュな少女は、
我々にも見覚えがありますよね・・・
四半世紀後、
「レオン」でナタリー・ポートマンが扮したマチルダは、
リュック・ベッソン流
本作へのオマージュでしょう。




訳ありの凸凹コンビ。
ライアン・オニール演じるイカサマ師が、またイイんです。
道中、口達者な相棒(ガキ)と丁々発止やりあっても
夜は静かに過ごす質だったり。笑
意外と几帳面。
ベッドのマットレス下にトラウザースを広げて、
一晩プレス代わりにするところも、ご愛嬌。




劇中、彼のスリーピース・スーツとシャツ姿が、また素敵でした。
オンボロの車でひた走り、
風と埃に晒されて、
ロングポイントのシャツ襟がヒラヒラとたなびくさまは、
じつに旅情を誘います。
ソフトカラー(襟)の気分を日常のスーツスタイルに取り入れるなら、
タブカラーもお奨め。
こちらも襟先をラウンドにすると、グッと雰囲気が出ますね。




つまみのおかげで襟先がめくれあがることなく、
柔らかな表情を演出。
スナップ留め、ループ留め、
お好きな方をお選びください。
ソフト襟に合わせるタイは、
織り柄ではなく、薄手のプリント柄がマッチ。
結び目をキュッと小ぶりに絞って、
しれっと垂らす感じ。




映画の紹介も、しれっと済ませましょう。
ネタバレではなく、
主題曲の気分をご参考までに
http://www.youtube.com/watch?v=R8yZ54dVbZM

本作をご覧になれば、
誰かと語り合いたくなること請合いです。
これから秋の夜ながに、
お楽しみください。






札幌元町 ノーザンテイラー

http://northern-tailor.jp/

2012.09.11 Tuesday

名画に捧ぐ、チョークストライプ・スーツ


醒め遣らぬ残暑。
夏の賑わいが未だ話題に事欠かず、
内に外に、
いやがうえにも
ナショナリズムの不穏さがまとわりつく昨今。

なし崩し的な安全保障といい、
一寸先、
火の粉がかかるのが他人事ではなくなる中、
せめて自らには、
何にも屈しない
筋が通った了見を持ちたいところです。




対立による緊張状態は世の常ですが、
その危険度でいえば、今の我々は一体、
どのあたりに立っているのでしょうか。

かつて、自由の国と喧伝されたアメリカにも、
不都合な実態を露わにしたことがありました。
冷戦ファシズム。
1950年代、合衆国内では
共産党員とその関係者を誰かれなく売国奴とレッテルづける、
社会的な排除、不当な追放が相次ぎました。
その余波は海を越え、
GHQ統治下の日本でも一万人以上が職を失ったとされます。

思想、言論の自由が封殺される危機。
そのなかにあって、報道の自由を貫こうとした男たちがいました。
【Good Night, And Good Luck】 2005




当時CBS放送網の「See It Now」というドキュメンタリー番組が、
この疑心暗鬼な連鎖反応、
通称【赤狩り】に対して一石を投じました。
番組のホスト役である、
実在のジャーナリスト、エドワード・R・マーロウ(1908-1965)と
制作ディレクターらは、
民間放送の矛盾に抗(あらが)いながら、ひとの世の良心とは何かを、
視聴者へ投げかけます。

画像はマーロウ役に扮した、
主演のデイヴィッド・ストラザーン。
取材チームが持ち寄った記録をもとに、
自らが原稿タイプを打ち、
声を届けるキャスター。

往時、新聞媒体ならコラムニスト、
テレビ・ラジオ媒体では番組ホストという存在は、
時に命がけで、
ペンによる
もろ刃の剣を振るっていたそうです。
詳しくは是非、映画でご覧ください。




当店では、秋冬生地のお仕立て一着目がさっそく上がりました。
紺地のチョークストライプ(super100's)を用いた、
スリーピース・スーツ。

生地が持つ特色、個性から見て、
必然的にこのような様式となりました。
羽織るというより、身仕舞いの心もちといいましょうか。

必要十分な肩先と胸の量感、
胴絞りにかけての情感が、
長丈のフロントカットに余韻を流し込みます。




ここではベストというよりも、
英国流にウエイスト・コートと言うのが相応しいところ。
しかし、
そういった柄ではないので止めておきましょう。
いますよね。
日本でわざわざ、オアシスを
オエイシスとか言っちゃう業界人!!


汗かいてきました。笑
さて、ベストの仕様はご覧のとおり
6ボタン5掛けで、Vゾーンを深くとった分
ボタンの間隔はキュッと詰まり気味にしています。
こちらはお好みで、合わせるジャケットとの兼ね合いから、
バランスを探っていきましょう。




シャツはロイヤル・オクスフォード地の140番手。
襟の芯地は薄いものを用いて、カラーキーパーは着脱式にしています。
襟元が微(かす)かに、
タイの弾力でしなる具合。

仕立て服といいましても、
スーツ、シャツ共に
あたかも一張羅のような仕立て映えではない
見た目にもくつろいだ着心地を味わって頂きたく。




よく見ると、
異なる二つの微細なストライプによるもの。
このスーツ生地の特徴です。
幅広のチョークストライプというと、
大柄な体格に仕立てはダブルブレステッドが一般的。 
というように着る人、様式も限られがちですが、
こちらのストライプは幅広でも押し出しが目立たないため、
細身の方にもグッと渋くおさまります。




当店で通常のお仕立てに用いるボタンは、
各種、水牛角とナット素材のもの。
なかでも水牛角の場合、
二つの形状をご用意しております。
今回のお仕立てには、左側お椀型のものを選択。
指でつまみやすいため、
ベストのボタン掛けさえ
心なしかドキドキして・・・??

できることなら、
エマニュエル・ベアールのような女性に
外して

いや留めてもらいたい!!
ちょっと古かったですか。笑
キーラ・ナイトレイも抜群ですね。
いいんですッ
夢見ましょう☆




トラウザースはワンタックのベルトレス仕様。
ベストに合わせて股上を深くとった分、
サスペンダーで吊れるようにしました。
立ち姿は静止時よりも、
動いた時にヒラヒラと生地が揺れ、
雰囲気が醸されるように。




【Tricker's  U Throat Oxfords】
いわゆるアデレイド・セミブローグ。
一見シンプルな黒靴ですが、
よく見ると、履き口とハトメ(紐穴)周りの意匠が特徴。
ここではU字型の継ぎ目を
Throat =口元、ノド元といった解釈なようです。

Tricker'sといえば、
日本では重厚なカントリーブーツが専売特許ですが、
こういった普通のタウンシューズにも、
タフで堅牢さに手抜かりがありません。
また、一部穴飾りを施した帯の幅が、
ほかの代表的な英国靴と比べてやや太く、
そのあたりにも野趣ある個性が光るところ。




チョークストライプ、そのうえスリーピース・スーツなら、
TPOに応じてオンオフ柔軟に着まわしが可能。
つづけて、別の組み合わせ例をご紹介します。




昼と夜、
二つの顔をお楽しみください。
例えば私的な場でしたら、
このようにベストの第1ボタンを外してみると、
見た目さえ、
大人の余裕を印象づけます。




シャツ生地はThomas Mason の140番手。
赤の縞に加えて別にもう一本、微細に黒糸があしらわれています。

パステルカラーのストライプとは異なり、
ダークスーツと対比ではなく、調和する具合。




色づかいの妙味が、輸入生地の強み。
ここで逢ったが百年目!!
そういうものに限って在庫品薄だったりしますから・・・
悩ましいかぎり。




【Old Church's Diplomat】
言わずと知れた73ラストのセミブローグ
秋冬はがぜん、
こういったむさくるしい

武骨な靴が恋しくなる季節。
愛好家の方々もそろそろ、手入れの再開でしょうか。




以上、
名画の中の気骨ある男たちへのオマージュ。
チョークストライプ・スーツのお仕立てをご紹介しました。
最後に、
マーロウ氏のスピーチをご覧ください。
本編のネタバレにはなりませんので、映画未見の方もどうぞご心配なく。
ヒアリング?? 
いいんですッ!! 私だって聞き取れませんから。

http://www.youtube.com/watch?v=NbAb7Ek8z5Y

1950年代の時点で、
彼は半世紀後のマスメディアの有り様を予見しています。
あたかも、アイゼンハワー大統領が退任スピーチで、
国益と軍拡の影響性を警告したように。
広告ありきの媒体にしても同様。
もし、当時のジャーナリストが今日のインターネット社会を見たら、
公共性についてどう動いたでしょうか。




当ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。
秋冬生地も着々と出揃ってきており、
構成が整いましたら
ご案内状を送らせて頂きますので、
ご期待ください。

もちろん、随時お問い合わせやご来店を
心よりお待ちしております。


札幌元町 ノーザンテイラー

http://northern-tailor.jp/

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