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2012.07.27 Friday

扣鈕(ぼたん) 夜話


時節柄、素敵なお便りを数々頂戴します。
画像の一枚は、若き書家による筆。
新たな出会いに、世界が広がり、
同時に
身が引き締まるおもい。

そこで詩を一遍、ご紹介させてください。




扣鈕(ぼたん)   森鴎外

南山(なんざん)の たたかひの日に
袖口の こがねのぼたん
ひとつおとしつ
その扣鈕(ぼたん) 惜し

べるりんの 都大路の
ぱつさあじゆ 電燈あをき
店にて買ひぬ
はたとせまへに

えぽれつと かがやきし友
こがね髪(がみ) ゆらぎし少女(をとめ)
はや老いにけん
死にもやしけん



これは、作家であり軍医でもあった森鴎外が
日露戦争従軍中にしたためた【うた日記】より、
激戦の地、南山を取り上げたもの。

''こがねのぼたん''
といいますから軍服の金ボタンか??
いや
''はたとせまへ''二十年前に
外国で買い物した
といいますから私物とおもわれます。

いずれにせよ
ボタン落としちまってさ〜
そういや
おもいでの品だったっけ
あのときの子、今頃どうしてるべか??

という書き出し。
えッ??

極限の戦地にて
こともあろうに
失くしたボタンから
二十年前の恋人を偲ぶという、
スケベごころ
じゃなくて
男ごころ。

かつてその少女(をとめ)=エリスは、
ドイツを去った鴎外を忘れられず
はるばる洋行来日したほどの惚れようです。
終生忘れ得ぬふたりの、
こころもよう。
流石鴎外
そのモテっぷりまでボーダーレスでした。




(公人)森鴎外⇔(私人)森林太郎
どちらの境涯であれ、
私たちは逆立ちしても到底マネできませんが、
それでも
''こがねのぼたん''を愛でるたび
過ぎし青春時代が
よみがえってくるときがあるような・・・
だって男は
ナルシスト
じゃなくてロマンチストですから☆

恋するひとには、
ずっと
時をかける少女のままでいてください♪♪




ボタンをめぐるあれやこれ
当店では、
スーツ、ジャケット、そしてシャツに用いるボタンも、
お選びいただく生地やデザインの仕様に応じて
各種豊富にご用意。

水牛の角、またはナット(ヤシの実原料)、
そして蝶貝ボタン、と
いずれも天然素材のものを
数ある色味のなかからお選び頂けます。

それでも飽き足らないッ。
というお方にはオプションで
''こがねのぼたん''もラインナップ。

上画像のものは、英国の老舗生地商【HOLLAND & SHERRY】
ホランド&シェリー社のブラス(真鍮)ボタン。
乗馬をモチーフとした
馬と馬蹄のデザインは、
マリンルックとは趣を異にした紺ブレザーにお奨めです。




こちらは通常のお仕立て代に含まれる
水牛角ボタンのラインナップ。
グレースーツに合わせただけでも、
ボタンの色味によって、
全体の印象が変わるのがお分かり頂けるとおもいます。
ボタンひとつで
合わせるシャツ、タイ、そして靴の色味まで
大きく左右。
侮れません。




スポーツジャケットには、ナットボタンが軽やかに調和します。
色味だけでなく
質感さえ柔らかな印象。
コットンや麻混の生地には、ボタンもおなじ植物由来同士という
素材の関係性が、じつは理に適っていたり。
サマージャケットにかぎらず
秋冬のコーデュロイにも素朴にマッチします。




番外編として、変わりダネのカジュアルジャケット
私物の参考品です。
もとは白の貝ボタンでしたが、
メタルボタンに付け替えました。
このように、既にお持ちのジャケットさえ、
ボタンひとつでさま変わり。
オーダーの参考としてだけなく、既存のジャケットに付け替えであれ、
どうぞお気軽にご相談ください。




めでたくお披露目
Northern Tailor
オリジナルの蝶貝ボタンです。

これは当店の開業を祝して
たいせつな仲間であり先輩が贈ってくださいました。
考えもつかなかったアイデアであり、
サプライズ☆

この版をもとに
三種類
ボタンメーカーさんで引き続き製作してもらいます。
誠にありがとうございました。

豆粒ほどのなかにある
まごこころの交歓、
そのメッセージは掛けがえのない
宝ものです。

日ごろお世話になっております皆さまへ


札幌元町 ノーザンテイラー

http://northern-tailor.jp/


最後に
詩の続きを・・・

はたとせの 身のうきしづみ
よろこびも かなしみも知る
袖のぼたんよ
かたはとなりぬ

ますらをの たまと碎(くだ)けし
ももちたり それも惜しけど
こも惜し扣鈕(ぼたん)
身に添ふ扣鈕(ぼたん)

2012.07.21 Saturday

不在のお知らせ - 2012年7月





平生
当ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

この度
7/25(水)、/26(木)
お取引業者様シーズン展示会へ参加のため、
不在とさせて頂きます。
ご不便をおかけしますが、何卒ご了承願います。




東京都内
ご注意ください!!



札幌元町 ノーザンテイラー

http://northern-tailor.jp/

2012.07.13 Friday

開業のご挨拶





謹啓
小暑の候、皆様におきましては益々ご清祥のこことお慶び申し上げます。
さて、私儀
来る7月14日
【札幌元町 ノーザンテイラー】を開業いたしますので、
謹んでご案内申し上げます。

こうしてスタートラインに立てたのは、
ひとえに、
皆さまの励ましとお力添えのおかげです。
誠にありがとうございます。

今後、質の確かなサービスの担い手となるべく、
心意気と根気をモットーに前進して参りますので、
何卒
よろしくご愛顧お引き立てを賜りますよう、
お願い申し上げます。

平成24年7月13日
ノーザンテイラー
代表 町屋亮一郎


どうぞお気軽にお問い合わせの上、
ご来店ください。

ご注文の有無にかかわらず、
ささやかなおみやげをご用意して
お待ちしております。


札幌元町 ノーザンテイラー
http://northern-tailor.jp/

2012.07.07 Saturday

オーダーシャツができるまで


ノーザンテイラー号の始動が目前に迫りました。
お問い合わせも数々頂戴し、
誠にありがとうございます。

笑顔でスタートラインに立ち、
お客様をお迎えできるよう、
まだまだ、ならし運転の最中。

のつもりが・・・
待ちきれません。
ということで、ギアチャンジ。

ガッツリ、アクセル踏み込みます!!

しっかりつかまってください。笑



今回取り上げる題材は、
【オーダーシャツができるまで】

当店では、
スーツ同様の情熱とセンスを、
オーダーシャツの品質に折りたたみ、
お客様にご提供します。

ビジネス、カジュアル、TPOに応じてスタイルを愉しみましょう。

一見、大差ないデザインのちがいも、襟の開きや高さによって、
着用した印象は意外や大きく変わるもの。

シャツ、スーツ、
お客様ひとり一人の個性に相応しいフィッティングがあってこそ、
ふたつがひとつに。
分身さながらの境地。



当店のオーダーシャツは、国産、輸入生地それぞれお客様のご用途に合わせて、
豊富に取り揃えております。

着る毎に洗濯する消耗品ゆえ、
オーダーシャツは贅沢・・・
とお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、
シャツこそ肌に直接触れる、言わば第二の皮膚。
頸や肩、微妙なフィッティングの違いにより、
身体の姿勢にも影響。

要所のフィットと適正なゆとりは、
自然と背筋が伸び、気持ちも引き締まります。

お好みのデザイン、合わせるジャケットを念頭に置き、
オーダーの打ち合わせに入りましょう。
お客様の個性、ライフスタイルを反映させるべく、
入念に採寸。

生地は、
店頭在庫の反物、または生地見本からお選び頂きます。
詳しくは以下のサービス内容をご参照ください。
http://northern-tailor.jp/made-to-order-1-2.html



上の画像は、
オーダーシャツを製作して頂く、シャツメーカーの工房にて。
技術者の方が、
お客様のオリジナルデザインや採寸データをコンピューターに取り込み、
CADシステムで正確にプログラムを製図化していくところ。

いよいよ本編の始まり。
この度、製作現場を取材させて頂きました。
シャツメーカーのオーナー、工場長、そして技術者の皆さま、
ご協力、誠にありがとうございます。

なんと、
全編撮り下ろしの初公開!!

大のオトナがこれほどワクワクするとは、
いまだかつて
宮沢りえちゃんのヌード写真集以来かと思われます・・・汗

失礼しました。
デザインルームは工房の中枢。
厳粛に行きます。
こうしたミリ単位の精緻(ち)な技術力が、常に均一な修正バランスを再現。
折しも、ちょうど先頃導入された新型のCADシステムを、
技術者の方は静々と操作されていました。



刷り上がった製図が工房に送られ、
次は、パタンナーと称される熟練の技術者が、型紙を作成します。

オーダーメイドですから、
二つとして同じものはありません。
同種のデザインであれ、寸法の差異による仕上がりのイメージは、
千差万別。
似て非なるもの。

お客様の注文仕様書、そして、製図の数値インフォメーションをもとに、
襟の折り返しを工夫。
確かな技術と豊かな想像力が問われます。

【固有の型紙】とは、
無機質な厚紙に、
ハンドメイドの英知が刻まれたもの。



いよいよ、裁断作業に掛かります。
裁断の専門家さんが、刃物片手に一枚の布地から襟、肩、身頃、袖、カフス・・・
と慎重にかつ手際よくパーツを収めて、断ち切ってゆく姿は、
外科手術をおもわせます。
易々と近づけません。

通常、シャツ一枚分の生地用尺は、150cm幅×180cm長
この中にパーツ全てを収め、
場合によっては、お客様のリクエストで予備の襟やカフス分も必要となります。

残布を無駄にしないことは、作り手のプライドと思いやり。
特に、柄物の生地では柄合わせも要注意。
限られたスペースの中、ギリギリの攻防が伝わってきます。



こちらは、襟の重要な形成箇所。
生地を部分的に縫い合わせて、
先端が尖った心棒に差し込みます。

柔らなか布地が、鋭敏な造形品に変容。
襟先のことを、または剣先とも言いますが、
さもありなん・・・



重ねた生地にアイロンを当てていますね。
こちらではいったい、何をされていると思いますか?

それも重なり具合が、微妙にズラしてあります・・・
添えた手の構えから、もう察しがつくでしょうか。

はい。
この技術者の方は、
身頃の前立て(ボタンを縫い付ける折り返し)の部分を、
それも小指の幅にも満たない分量を、
フリーハンドで摘(つま)み、
アイロンで真っ直ぐ折り目付けしてしているのです。

端から端まで、
定規もピン留めも、なにも無し。
目にもとまらぬ、早業(わざ)。

忙しい作業のなか、私の図々しい撮影に、
はにかみながら応えてくださった、
チャーミングな笑顔も印象的でした。



ヨーク(肩部)の片面。
ここを起点に
襟が立ち、身頃が広がり、そして袖が通る。
いわば個々のパーツが人の体、
三次元の体(たい)を為します。

別な見方をすると、集約ともいえますね。
シャツをご自宅で洗濯、アイロン掛けされる方にはお分かりかと思いますが、
手の込んだオーダーシャツほど、このヨークの部分が、
アイロン台で平らに伸ばし辛いもの。

襟ぐりを深くとり、アームホールも適度に絞った代(しろ)物には、
このヨークに集約される生地のいせ込みが、品質の証。



全体像が見えてきました。
製作も佳境に入ります。
縫製ピッチはフル回転、ミシンの駆動音までリズミカル。

この間、縫製士の方は、
ほとんど体勢が一定のままです。
ささっと裏返す程度。

まるで中に隠れた縫い代(しろ)が、
透かして見えるかのように、
淀みなく、
次つぎと針を進めていきます。

縫い終えたものを、
私はこっそりとMr.ビーンのように
眇(すが)目でのぞき込んでみましたが、間違いない。
キテます!!




仕上げです。
一枚の布が、
遂にここまで来ました。

使い込まれた重厚なアイロンの鏡面を通して、
各段階、各工程の結晶、
作り手の息吹が流れるよう。



感慨ひとしお。

というのも、
私事で恐縮ですが、
私自身が、こちらのメーカーのオーダーシャツを愛用し、
十年来の関係なので・・・

あるオーダーサロンの一(いち)注文客として、
長年、実はこちらの工房で作ってもらっていたのです。

当時は知りませんでした。
この道に入ってから、知り得たこと。

販売店は、お客様の注文品に責任を持ちますが、
製造元は伏せます。

製造元にも、お客様の個人情報(プライバシー)は伏せます。
それが当店の【品質本位と個別サービス】です。
http://northern-tailor.jp/greeting.html



いかがでしたでしょうか。
オーダーメイド、ハンドメイド、とひと口に言いましても、
お客様が実際にその製作現場に赴き、お取引できることは、
なかなかありません。

これから当店は、
お客様とのコミュニケーションから生まれるご注文のを発芽させ、
製作現場に、
そのを届ける役割を担います。

双方と信用をお取引するうえで、
この記事を書かせて頂きました。

この度、撮影と記事掲載の許可をくださった関係各位に、
かさねて御礼を申し上げます。



ご覧頂き、誠にありがとうございます。

七夕の空に、
願いをこめて・・・


札幌元町 ノーザンテイラー
http://northern-tailor.jp/

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