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2012.06.28 Thursday

ノーザンテイラーの書棚より



 

ノーザンテイラーの書棚より、
おすすめの写真集をご紹介します。

当店では、
お越しいただいたお客様と、コーヒーを飲みながら語らい、
双方世界観のイメージを共有できるよう、
ファッションに限らず
さまざまな参考資料をご用意しております。

今回ご紹介する一冊は、
【La Tavola e la Civilta del Lavoro】

直訳すれば、
食卓と勤労文化、・・・なんじゃそりゃ?笑
意訳すると、
職場の昼メシ風景

という感じです。

仕事もお洒落も、まずは腹ごしらえが肝心!

これは、GRUPPO ONAMA というイタリアの外食産業グループが、
創立30周年を記念して編纂(さん)、1996年に発表されたもの。

過去のあらゆる記録写真から、
昼メシ時の風景をとおして、
ずばり20世紀の変遷(せん)を綴った
歴史ポートレートといえます。




ANONIMO 撮影
1920年 ニューヨーク
ロックフェラーセンター地所開発による、
超高層ビル群の建設現場。

地上何百メートルなのでしょうか?
足がすくみます・・・
作業員の男たちには、命綱がありません。
平然と、
くわえタバコでランチボックスを手にしています。

撮られる方も、撮る方も、
現代の感覚では、正気の沙汰ではありません。




ANONIMO 撮影
1928年 ペルージャ
女子工員さんたちの給食風景。

威儀を正し、整然と並ぶ白衣姿は、
お祈を捧げたばかりのよう。
奥には十字架が見えます。

また、壁に掛けられた標語を見ますと、
PULIZIA
CIVILTA
EDUCAZIONE
とあります。

清く
正しく
教養を
という意味合い。

そんな女性(ひと)に逢ってみたい!

男心に刺さります。




KORTE 撮影
1940年 ローマ
Accademia Musicale
とありますので、音楽大学のようなところ。
そこの学生食堂より。

時代はムッソリーニ体制下、
まさに第二次大戦開戦の頃ですから、
エリート音大生も、
芸術家の卵というよりは、
いわば軍の楽団のような役割だったのかもしれません。

とはいえ、
食事は楽しくマンジャーレ!
ラテンの陽気さが伝わってきます。




ANONIMO 撮影
1946年 トリノ
タイヤメーカー【ピレリ社】の社員食堂にて。

終戦の翌年、
一変しました。
粗末な食事をただ黙々と、
ブリキ食器の乾いた音だけが響いてきそうです。

イタリア有数の企業でさえ、
このような環境ですから、
終戦当時、一般市民の疲弊ぶりは
日本に限らず、ヨーロッパも推して知るべし。




TONI NICOLINI 撮影
1961年 ミラノ
地下鉄工事の現場より。

パニーノ(簡単な具材を挟んだパン)でしょうか。
行動食という感じ。
傍らには、ワイン瓶があります。

枯葉らしきものが見えるので、
晩秋の気配。
体格といい、面(つら)構えといい、
役者以上の存在感ですね。

なお、
ミラノ地下鉄一号線は、
1964年に営業が始まりました。




BRUCE DAVIDSON 撮影
1960年 ロサンゼルス

テーブル向こうがマリリン・モンロー
右が夫で、ピューリッツァー賞作家のアーサー・ミラー
手前がイブ・モンタン
http://northern-tailor.jp/source-book-1-3.html
(ページ三項目をご参照ください)
そして左が、彼の妻シモーネ・シニョレ

これは、モンタンとモンローが共演した作品、
【恋をしましょう 1960】の撮影期間中だとおもわれます。

モンタンは39歳。
モンローは34歳。
ともに、
歌手であり、映画スターでもあり、浮名を馳せました。

伴侶がいようと、
ぶっちゃけ、恋は盲目!
こりゃ大変だ・・・

それぞれ視線の先には、
意味深な4角関係がうごめいています。




HENRI CARTIER-BRESSON 撮影
1971年 ターラント
南イタリア第三の都市。

イタリア半島をブーツに例えると、
ターラントは、
ちょうど踵(かかと)の付け根にあたります。

二つの湾を持つ、入り江の都市は、
軍港、貿易港、漁港を擁する
古くから海運の要所。
大戦後は、大規模な鉄鋼コンビナートが
国策で進められました。

作業員のオッチャンたちは、
なにやらポケットナイフで
サラミか果物でも剥いているのでしょうか。

和みますね。




FERDINANDO SCIANNA 撮影
1987年 ミラノ
ミラノコレクション、ドルチェ&ガッバーナのバックステージより。

誤解のないように、
この一行(こう)は変態プレイではありませんッ。

れっきとした興業の身支度です。笑

コレクションの期間中、
人気モデルは1日に複数のショーを掛け持ちしますから、
食事の時間もままならぬ忙しさ。

それにしても、
褐色の肌に、リンゴの白さ。
偶然にしては、
出来すぎなような構図・・・




MARTIN PARR 撮影
1993年 ロンドン
キング・クロス駅にて。
本には、buffet と記されているので、
駅の簡易食堂とおもわれます。

絵画のような、一瞬間。
どこか、
エドワード・ホッパーの画集にあるような、
窓明かりの光彩と天井の高さが
印象的です。

調べてみますと、
キング・クロス駅は、1852年開業。
ロンドンの主要ターミナル駅のひとつ。




行ってみたいですね!
また、
人気小説【ハリーポッター】シリーズで、
主人公の少年が魔法使いの学校へ旅発つ際の、
始発駅としても、愛読者には有名だそうです。

あいにく私は【ハリーポッター】について、皆目知りません。
これを機に、なにやら興味が湧いてきました。

いかがでしたでしょうか。
ページをめくると、
時空を超えた世界紀行。

皆さんは、
今日のランチ、
どんな顔して召し上がりましたか?

昼食の風景から、
時代が読みとれるように、
スーツの様式にも、
英国、ヨーロッパ、アメリカ、
ひとの暮らしの背景があります。

当店は、
お客様と face to face による
コミュニケーションがモットー。

将来、
北海道の暮らしに根ざしたスタイルの、
ノーザンテイラー写真集。
お客様ポートレートを
献上できますように・・・



札幌元町 ノーザンテイラー 

http://northern-tailor.jp/

2012.06.21 Thursday

靴の手入れとエイジング


あいにくの台風
暦のうえでは夏至ですが、
この空模様では
いまひとつ実感がありませんね。 

今回は予定を変更して、
雨にちなんだテーマを取り上げます。
♪ Singin' In The Rain 〜

こころは晴れ晴れと行きましょう!




これは、戦後のミュージカル映画の代表作、
【雨に唄えば 1952】より、同名の主題歌です。
主演のジーン・ケリー(1912-1996)は、フレッド・アステアと並ぶ名ダンサーであり、
エンターテイメントのレジェンド。

ともにタップダンスを切り口に、
大胆かつ繊細な、唯一無二のパフォーマンス・スタイルを完成させましたが、
先輩アステアは、ワルツの要素を織り交ぜた、優美なスタイルを得意とします。
また、
ときに自らは影となり、相方の女優を引き立てる紳士の鑑(かがみ)でした。
全盛期はモノクロフィルムに目白押し。
http://northern-tailor.jp/source-book-1-3.html

http://www.youtube.com/watch?v=T45iRSvxaVM&feature=related

後輩ケリーはといいますと、
器械体操選手だったキャリアを活かしてアクロバティックに、
スクリーン狭しと、ときに大仕掛けの舞台を飛び廻ります。
時代もカラーフィルムの黎明期。
ワイドスクリーンと見事にシンクロナイズしました。




♪ I walk down the lane
With a happy refrain ♪

この歌を思い出すと、
たとえ雨のなかでも、足どり軽く、弾むように歩けます。
それも自分らしい装いなら、なおさらですね。

ただし、
後の手入れ=ケアーが欠かせません。
せっかくですから、これも鼻歌交じりで楽しくやれたら、一石二鳥。

先日、東京出張で雨のなかを一日歩き廻りました。
画像は、その日を伴にした私の靴、じつに15年来の相棒です。
【Old Church's Consul】

英国靴のベンチマーク、73ラストのキャップ・トゥ。



ご覧のとおり、中底の革が飴色に経年変化し、
履き口のまわりも、かなりくたびれておりますが、
それも愛着。
香ばしい・・・
気持ち悪いですね。笑


失礼しました。
さて、ここからがノーザンテイラー流、ケアーの本題。
帰宅後、濡れた靴を脱いだら、

疲れて寝入ってしまう前に忘れず、
木製のシューキーパー(シューツリー)を装着します。




靴専門店へ行くと手に入ります。
東急ハンズにもありますので、一度手に取ってみてください。
形は、画像のように、リアルな塊のものもあれば、
前方が左右に割れた、手軽なのものもあり、さまざま。

重要なことは、甲と踵(かかと)をつなぐ金具が
バネ式でしっかりと押し込めるものを、選ぶこと。

ただ皺を伸ばすだけでなく、
バネの強度で、
屈曲した靴のフォルムを、真っ直ぐ正す作用があります。
これが威力を発揮。

シューツリーを入れた状態で、
壁に立てかけ、数日間放置。

下駄箱のなかは禁物。
風通しの良い環境が理想です。
時々、シューツリーを抜いて乾き具合をチェック。




そして、休日。
手が空いた時にでも、
ささっと始めましょう。

靴の保革オイルとクリーム各種は、お好みで。
なお、ノーザンテイラー流では、
汚れ落とし用のクリーム(リムーバー)を使いません。
多少の染みや汚れもいとわず。
エイジングの醍醐味=年輪だという価値観です。

靴ひもを解き、
まずは大きなブラシで埃を掻き落とします。
つぎに、
ビニール手袋の指先にクリームを少量ずつ取り、薄く塗り伸ばしていきます。
オモテが済んだら、
手袋を変え、革底やコバ(側面の際)も同様に保革オイルを擦り込む要領。



ここでご注意を。
必ず、風通しの良い環境で作業してください。
でないと溶剤特有のツンとくる匂いに、おもわず酔って(ラリッて)しまいます。

半日放っておきましょう。
夜半、ウィスキーを一杯やりながら、最後の段階。

中サイズのブラシで荒磨きして、全体に馴染ませます。
仕上げは、使い古しの靴下で、入念に乾拭き。
ハイ。
いい具合に、酔いもまわってきました。




完成です。
口笛拭きながら、矯(た)めつ眇(すが)めつ、
上機嫌 ♪
ようッ相棒、これからもよろしく頼むぜ!
おうよッ!
気が付けば、脳内ミュージカルが・・・

http://www.youtube.com/watch?v=D1ZYhVpdXbQ





ノーザンテイラー流、手入れ法。
いかがでしたでしょうか。

仕立ての良いスーツが着るひとの姿勢に寄り添い、
数日間ハンガーに掛ければ
また自然とよみがえるように、

靴も手入れ次第で長持ちし、
やがてはそのひとらしさ、エイジングがあらわれます。

お客様と、
ときの流れを共有できる店として、
ノーザンテイラーも彩りを添えつつ、
成長していきます。



札幌元町 ノーザンテイラー

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2012.06.15 Friday

サマースーツと様式バランス


陽光の下、
北海道神宮祭もたけなわ。
大通公園には山車(だし)がお目見えし、
祭拍子も青空に響いていました。
もうすぐ夏ですね。




今回はサマースーツの装いについて、取り上げます。
画像は、参考品としてご用意したスーツ。
2ボタン仕様の、細く端正な雰囲気をテーマにしました。

この場合、黒のオクスフォード靴は、
つま先の穴飾りを排したシンプルなものが、
重心バランスにも奏功。

スーツは抑揚を抑えたシルエットながら、
それでいて寸胴ではなく、スッキリと身体にトレースしています。

デザインの特徴を強いて挙げますと、
ナローラペルと、僅かに短めの着丈バランスでしょうか。
見た目にも、軽やかさを意識させました。
ただし、当店が理想とするクラシックな様式の範疇で、調整した限りです。

生地はライトグレーのピンチェック。
一見無地に見えますが、
経(たて)糸は黒とグレーを交互に、緯(よこ)糸は白を配した、
極微細な織りづかい。
ウール92%にシルク4%、ポリエステル4%、という構成。




画像からでも、質感が伝わるかとおもいます。
よく見ると無地ではなく、
色糸と白糸の織りなす、涼やかな陰影。
シルクとポリエステルを混紡させることで、
乾いた肌触りと、ストレッチ弾力の実用性をもち合わせました。

では、このスタイルのモチーフとなった、
サマースーツの代表的な用例をご紹介します。




【007 Dr.No 1962】
 ご存知、007シリーズ第一作。
ショーン・コネリー演ずる初代ジェームズ・ボンドは、
スーツの装いを語るうえで欠かせない存在。

なぜか?といいますと、
初代ボンドとそのスーツスタイルの関係性は、
原典イアン・フレミングの小説を映画化するにあたり、
数々の捻(ひね)りが加えられました。

ステレオタイプの英国紳士像とは、一線を画します。
スコットランド出身のショーン・コネリ―という配役、
また、スーツのデザインや仕立ての見地からも、じつに画期的な意欲作。
あらゆる経緯で、
エポックメイキングとなりました。




今回のブログテーマでは内容が収まりきらないので、
詳しくは割愛させていただきますが、
このスーツスタイルは映画製作から50年経った現在でも、
流行を超越した孤高の様式を呈している。
とだけ述べさせてください。

飾り気のない、ソリッドな着こなしからは、
仕立てのバランスや工夫が随所に確認。
まず何より、着るひとの趣味の良さが、
パーソナリティーが引き立ちます。

男にとっては永遠の憧れ・・・
何しろ、タフな一匹狼は、
機知に富んだユーモアと教養で、
つぎつぎと美女を落とす!


あれッ、何の話でしたっけ?
スーツの話でしたね・・・
脱線失礼しました。

閑話休題、
生地は、キッドモヘア―混紡による、ライトグレーの贅沢なサマーウール。
薄く軽く、シワになりにくい特性。
とりわけ、夜気に映える光沢から、
マティーニを嗜むボンドにはぴったりの選択。




舞台は夏、
特例の任務を受け、
カリブ海諸国の空港にボンドは降り立ちました。

ひと仕事済ませ、ホテルに着いても、
諜報員たるボンドには気の休まる間もありません。
部屋に仕掛けられた罠を、用心深くチェックしていきます。

トラウザーズはツータックのベルトレス仕様。
程よくテーパードした細身のシルエット。
画像には映っておりませんが、
足元は黒靴がキリリと引き締めます。

シャツの袖口にもご注目ください。
袖の一部分を折り返した、ターンナップ・カフスという仕様です。
これはシングルカフの簡便さとダブルカフスの優雅さを
いいとこどりしたアイデアもの。

カフリンクスは不要。
普通にボタンを留めたままで、
折り返した袖はあたかも羽根を広げたように、
軽やかな美しい弧(カーブ)を描きます。




昼夜のべつなく飛び廻るジェームズ・ボンドには、
ドレスとカジュアルを交配させた、このハイブリッドな仕様がぴったり。

また、普段ダブルカフスを愛用されている方が、
サマースーツには、
このターンナップ仕様を合わせると、
気分もいくぶん開放的になるとおもいます。

夏の夜、ビアガーデンで腕まくりをして、
ジョッキを打ち合うのも風物詩ですが、

ときにアフターナインは、日常の喧騒から逃れ、
夜の冷気に
ドライマティーニを傾けたいもの。

グラス越しのお相手が、
袖口の美しさに嫉妬するかもしれません。



札幌元町 ノーザンテイラー

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2012.06.09 Saturday

英国生地〜ハリソンズ・オブ・エジンバラについて〜



ノーザンテイラーお奨めの生地をご紹介します。

当店では英国、イタリアをはじめ、
国内外の良質な生地を厳選し、揃えておりますが、
それぞれの魅力を、モノとしてだけではなく、
土地の風土、歴史背景など、
ひとの暮らしに基づいてお伝えできれば・・・とおもいます。

今回取り上げるのは【Harrisons Of  Edinburgh】
ハリソンズ・オブ・エディンバラ
スコットランド発祥の老舗生地卸商です。

中世以来栄えてきたイギリスの毛織物産業ですが、
18世紀後半の産業革命を境に、その生産制度もかたちを変えます。
織機(しょっき)の技術開発による高速化、労働力の専門分業化。
マニュファクチュアの生産力が、
毛織物の品質を、より軽く、より薄く向上させました。

スコットランド地方といえば、
ハイランドと呼ばれる高地や、氷河に由来する入り組んだ地溝帯、
フィヨルド海岸の地形など、風光明媚な自然環境があげられます。

水に恵まれた土地はウィスキーだけでなく、
毛織物産業の拠点のひとつとしても有名。

1863年、実業家サー・ジョージ・ハリソンが
卸商【ハリソンズ・オブ・エディンバラ】を創立します。
後に彼は、エディンバラ市の市長となりました。
協業の資本力と政治の手腕が伺えますね。




【生地ブランド】とひと口に言いましても、出自はさまざま。
このハリソンズは卸商であり、メーカーではありません。

卸商は【マーチャント marchant】といい、
商品を企画して、織元【ミル mill】に発注し、問屋へ卸します。
そのため世界じゅうのアパレルブランドや仕立て屋のニーズに応えるべく、
毎シーズン、バラエティ豊かな色柄が揃います。

画像はジャケット用のシリーズ、【サン・ビーム SunBeam
上質のメリノウール80%にシルクを20%混紡したもの。
太陽光という名のとおり、青空の下に映える柔らかな質感が特徴。
フラッシュの光でいくぶん鮮やかに写っておりますが、
実際は、淡く柔和なベージュとブルーの風合いが、
奥ゆかしい印象です。

この場合ジャケットには、極力軽いお仕立て、
尚且つ、綺麗な生地を活かすシルエットをお奨めします。
綿や麻のシャツ感覚ジャケットとは違う、
サマーウールならではの柔らかなフィット感をお愉しみください。

カーキのチノパンツに、紺色シャツなどを合わせると、
街中でも大人のリゾート気分を味わえますね。

 



こちらも同シリーズより、
薄茶にブルーのウィンドウ・ペーン、格子柄(3.5×4.5cmピッチ)です。
こちらは一見地味ながらも、仕立て上がりは惚れ惚れする存在感。
そういったオーラが浮かんできませんか。
通好みのひと品といえます。

オフホワイトのパンツの裾を無造作に折り返して、
素足にトッズのドライビングシューズを合わせてみたり・・・
飾らないお洒落を気どりたくなります。

 



色違いです。
紺地に茶のウィンドウ・ペーンは、ご覧のとおり、清々しい出色。
生地をかざすと、うっすら透けて見えるほど、通気性に富む軽い織ですが、
着るとシャツが透けたりしませんので、ご安心ください。

こちらのような色合いだと、ボタンの選択も、俄然愉しくなりますね。
ナットボタンなら、品良く落ち着きます。
ネクタイに革靴のローファーがぴったりでしょうか。

よりカジュアルに、変化をつけるなら、
、貝ボタンも引き立ちます。
ポロシャツなどネクタイなしで合わせるようなご用途には、
アクセントとして一考。

お奨め生地とサマージャケット
いかがでしたでしょうか。
北国の夏に相応しい一着
お客様のスタイルにお役立てください。


当ブログ、関連記事のご紹介
【ハリソンズ・オブ・エジンバラ】150周年に寄せて
http://northern-t.jugem.jp/?eid=37

あわせてお読み頂けますと幸いです。


札幌元町 ノーザンテイラー
http://northern-tailor.jp/

2012.06.01 Friday

東区元町について


6月になりましたね。
札幌ではライラック祭りの季節。
街を歩くと、白や薄紫色の街路樹が目に入ります。
北海道には【リラ冷え】という風流な季語がありますが、
朝晩はまだまだ、
コートが手放せません。




ノーザンテイラーの開業も近づいてきました。
これから少しずつ、周辺情報をブログで発信していきます。

札幌元町、
ここを開業の地に決めて移り住み、ちょうど1年。
札幌じゅうを歩きまわり、
立地条件、土地の気風に、
ここだ!
とピンときました。

中心部から近いのにもかかわらず、広々としているところが、
やはり北海道らしくて落ちつきます。
ハイ、
あずましいねえ〜(北海道弁)

東区というと、
皆さんはどのようなイメージがありますか?
サッポロビール園、モエレ沼公園、そして丘珠空港・・・
私は西区出身ですが、小学生の頃社会見学で、
東区郊外の玉ねぎ農家を訪ねたことがありました。
おみやげに、たくさんいただきました。
そのせいか、いまだに玉ねぎとセットで親しみをおぼえます。




そこで東区の歴史を調べてみると・・・
1886年(慶応2年)、
箱館奉行の命を受けた大友亀太郎(小田原出身)ら一行が、
現在の北7条東16丁目あたりで開拓に着手。
土地を掘りきり、水路を整備。
その上流が現在の創成川として今も残っています。

開墾後、
蝦夷先住民の人との交易の場として栄えました。
当時は札幌元村といい、のちに札幌新町と合併。
これが元町となったとおもわれます。

明治初期には、本州各地から移民団が相次いで入植。
至る所にクマシカ出没する原生林
開拓には大変な苦労が伴ったそうです。
先人らの努力のおかげで、雑穀から果樹栽培へと豊かな土地が広がりました。

そこへ、
札幌農学校(北海道大学の前身)へ赴任してきた、ウィリアムPブルックス教授が、
故郷マサチューセッツ州の玉ねぎを持ち込み、栽培が始まります。
肥沃で風がつよく、乾燥しやすい気候が、玉ねぎ栽培に適し、
やがて独自の品種【札幌黄】が生まれました。




このほかにも、北海道民の歴史と密接な縁がありました。
元町は、民放ラジオ放送発信の地だったのですね・・・
街を歩くと、なかなか興味深く、心くすぐられる発見も。

昭和に入り、元町は札幌市に併合され、東区の一部となりました。
以後年々都市化が進み、地下鉄東豊線が開業。
現在は北区に次ぎ、札幌市で二番目の人口を擁します。

玉ねぎ畑は消えてしまいましたが、
どさんこ、札幌っ子として、空と大地に広がる
そうした開拓の原風景や息吹を、これからも大切にしていきたいです。







札幌元町 ノーザンテイラー
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2012.06.01 Friday

その人らしさを




当店のホームページ画像より
この一枚を見て、
お気づきの方もいらっしゃることと思います。
ボタンダウンカラーのシャツに、
カフリンクス・・・ 
んん??

じつはここに、ノーザンテイラーの開業理念を折りたたんでみました。
仕込みはオッケーです!!笑

〜適材適所を把握(はあく)したうえで、お客様をお引き立てする〜

このシャツは、当店オリジナルの襟型見本のひとつ。
襟型の特徴が分かりやすいように、
シャツのヨーク(肩部)を別色にしています。

このように、襟と身頃を別生地で仕立てたものは、
旧きセパレートカラー・シャツに由来。
かつてシャツの襟は丸ごと取り外し式になっており、
傷みやすい襟や袖口を付け替えることで、
一枚のシャツをながく愛用したそうです。

英国の文芸映画には、着替えのシーンなどで見られますね。
もとは生活の知恵から発展して、
お洒落のひとつに確立されました。




資料より、社交界の競馬観戦に赴いたチャールズ皇太子。
モーニングコートは昼の正礼装。
生地は、まず黒が一般的です。
グレーのモーニングコートを意外と思われるかもしれませんが、
Society Man(社交界の紳士)のなかには、
TPOで黒とグレーを使い分けることもあったようです。

視覚的にも、野外の音楽会やガーデンパーティーなどには、
グレーにブルーの彩りが清々しいですね。

そのような由緒があり、襟と身頃が別生地のシャツには、
全体に淡いトーン(色調)でまとめた、
昼の装いが好ましいとも言えます。
ご参考までに。





では次に、
ボタンダウンカラーのシャツについて・・・
言わずと知れたスポーツシャツの代名詞。
今でこそ、至るところの量販店でも売られていますが、
私が中学生だった二十五年前までは、
アメリカントラディショナルの洋品店、
また一部のセレクトショップに限られたものでした。

ブルックスブラザーズとは、
1818年創業、ニューヨークの老舗衣料品店。
メンズクロージングのビジネスを世界規模で手がけた草分けであり、殿堂。
ラルフ・ローレンも、ルーツはここにあります。

1900年、ブルックスブラザーズが新商品を売り出しました。
それがボタンダウンカラーのシャツ。
英国のポロ競技ユニフォームからヒントを得たとされ、
風でひらひらと襟がめくれ上がらないように、
襟先をボタンで留めたもの。
商品名は【ポロカラー・シャツ】といいます。

このネーミングが決定打。
実際にポロ選手が着用していたかどうか、
真偽は定かでありません。
しかし、ポロ競技など見たこともない我々庶民にとって、
なんとも夢がありませんか。
乗馬の気分に浸(ひた)れるシャツ。
 



名画【十二人の怒れる男 1957】より
主演のヘンリー・フォンダ

ニューヨークの裁判所に召集された男たち(陪審員)が、
ひとりの反対票をきっかけに紛糾。
社会人としての通念
家庭人としての信念
最後に私人としての情念がせめぎ合う、
密室劇の傑作です。

彼の着こなしにご注目ください。
ゆったりと身体を包む、サックコート。
ナチュラルショルダーに段返りラペル、
全体に丸みを帯びたシルエットからは、
シャツの襟にも柔らかなロールが見られますね。
これが、ブルックスブラザーズに端を発する、アメリカ東部の様式美。
型番から由来して、ナンバーワン・サックスーツとも称されます。

胸ダーツを省略した寸胴なシルエットは、着手の体型を選ばない既成服の手段。
Vゾーンの第一ボタンホールが裏返しになっているところも、
3ボタン仕立てをそのまま2ボタン向けに転用した名残り。
つまりは工業製品の先進性、合理性に行きつきます。

しかし、シャツはどうでしょうか?
彼の袖口を見ますと、生地を折り返したダブルカフス仕様が確認。
これには貝ボタンでなく、金属のカフリンクスが一般的。
袖口のおさまりが厚くなるぶん、着心地の差が歴然とわかります。
それゆえ、左右手首の僅かな寸法差も無視できません。
ダブルカフス仕様とは、
すなわち旧き良き、注文仕立てを偲ばせるもの。

既成服の様式をもつスーツに、
しかし、シャツはオーダーメイド・・・
名画に観るひとりの着こなしには、そのような二律背反がありました。
彼の職業は建築家という設定です。
有形無形のデザインセンスをあわせ持つ、プロフェッショナルな男の選択。
その人らしさが、宿る装い。

十二人の男たちのどこかに、あなたがいて私もいます。

これから出逢うお客様が、
当店の服をお召しになり、
やがてそのお人柄を物語るようなシーンが生まれるべく、
ノーザンテイラーはここに幕を開けました。





札幌元町 ノーザンテイラー
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