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2017.10.15 Sunday

秋冬スタイリングと絵画トリビュート -2017

 

秋になりました。

このところ雨が降ったり止んだりで恨めしいですが、

晴れた朝は、露に濡れた樹々がひときわまぶしく映ります。

紅葉の彩りも山から街へ下りてきましたね。

 

 

味覚の秋も目に優しく、

今年は珍しくイチジク(フィグ)が手に入りました。

 

 

 

ドライフルーツとしてポピュラー、

種子のプチプチとした食感が独特。

しかし生を食すのは初の機会です。

果肉は淡白、ほとんどが水分。

乾燥させてこそ味覚も凝縮するのでしょうか。

野趣とデリケートな取り合わせの妙。

 

 

 

2017年、秋冬お薦め生地とスタイリング

見た目のインパクトだけでなく

時を経ての関心にもつながれば幸いです。

そこでこの度は、1着の生地から上下揃い(スーツ)と、

どちらか単体でも着まわしが可能(セットアップ)に適した品々を選りすぐり。

〜ドレスとカジュアルの共存として〜

 

四幕ものの舞台

The Curtain rises.

 

 

 

まず一点目はホイップコードという織り柄。

英語では発音whipcord(ウィプコード)でしょうか。

ホイップ、あれですよ。(かき混ぜて泡立てるさま)

なるほど多義語なのですね。

語源は、縄を縛ったり打ちつけたりする動作にあるようです。

(;゜0゜)

 

 

昔の作業着、野良着から転じた一つでしょうか。

用途は何であれ厳しい環境を連想させます。

ご覧の通り、ツイル(綾織り紋様)が荒々しく

白糸による霜降りのグラデーションが特徴。

しかし表面は滑らかな手触り。

 

ドーメル社 made in Italy

全10色

 

 

ウェイト440g/m

実物がこちら。

決して万人受け(売れ筋)とは言えない品にもかかわらず、

一点ずつ手配してくださる生地屋さんのおかげで、

ノーザンテイラーはお客様にご案内できます。

 

肌寒くなる時季

しかし分厚く毛羽立ったツイード生地は、まだ気後れする・・・

といった移行期に重宝。

北国の秋は今が盛り、

この生地で仕立てたジャケットを愛用してくださっているカスタマーと、

午後のひと時をご一緒させて頂きました。

 

 

 

北海道近代美術館にて

ゴッホ展を鑑賞。

http://gogh-japan.jp

 

驚くことに開館40周年だそうです。

北一条通り、沿線の景色は昔と様変わりしましたが

美術館とその隣、知事公館の緑は貴重なオアシス。

しばし喧騒から逃れます。

 

 

 

 

 

北海道での本格的なゴッホ展は15年ぶり。

今回の構成は在りし日のゴッホが強く影響を受けたという、

日本の浮世絵も交えてのバラエティ。

個人的にはそこに惹かれました。

 

どちらも遠近感が独特。

浮世絵は俯瞰(ふかん)した構図や点のような人影に、なぜか惹かれます。

一方で、静と動が大胆なゴッホ

作品にもよりますが時に圧迫感を伴うため、

正直なところ、画集(図録)を欲しいと思わせる画家ではありません。

 

画像↑は「寝室」

皆様は、どうご覧になりますか?

歴史的価値があろうとなかろうと、鑑賞には別問題。

素朴な椅子は不自然な位置に放ったかたちで、しかしその向く先、

空の寝台上には所狭しと絵が掛かっています。

 

椅子に塞がれた扉、

窓の外も緑が立ちはだかり。

動線のない構図にあって唯一、壁に掛かったタオルの揺らぎが救いでしょうか。

 

鑑賞とは決して読み解く目的ではなく、感性を研ぐ娯楽。

あらかじめ親しみが希薄な分、実物と新鮮に向き合えました。

展示品105点のうちゴッホ作の油絵は33点、

十分な内容でした。

やはり彼の世界は近づきがたいものでしたが、数点、

親しめる作品と出会えたことに感謝。

 

 

 

鑑賞と散歩は付きもの。

近代美術館と道を隔てて隣にある、

北海道知事公館へ立ち寄ってみましょう。

http://www.sapporo.travel/find/culture/governors_official_residence/

 

 

 

 

 

北海道開拓に身を賭した方々のおかげで、

原野の自然と市井の暮らしを行き来できます。

何しろ、クマ出没注意ですからね。

 

 

村橋久成氏

薩摩の士族として幕末から明治維新を駆け抜け、

北方開拓の礎を刻んだのですか。

使者としての慧(けい)眼と潔さ、

その鮮やかな足跡に興味を惹かれます。

人生五十年

 

 

 

午後の散歩、

では始めましょう。

オランダ出身のゴッホが南仏に渡り魅せられたように、

薩摩の青年は北国へ赴き、その視界はどのようにして拓けたのでしょう。

良い時季に恵まれました。

 

 

 

 

 

 

 

 Mr. Classic enters.

 

 

 

 

 

 

仕立てをいくぶん軽やかにしました。

生地自体がしっかりとハリがあるため目立ちませんが、

肩から胸にかけての詰め物を省略しています。

春先もお召しになるご希望で、裏地は背抜きに。

 

 

デザインは乗馬ジャケットをルーツとするカントリークラシックを基調とし、

お客様の好みを踏まえた上で協議。

この度は替えベストを合わせることも想定し、

フィットバランスを調整しました。

 

 

 

 

袖付けの輪郭は残しています。

よりカジュアル、軽やかに見せるには凸を平らに均(なら)すと

また印象も変わります。

 

 

 

 

 

 

 

この度はお手持ちのトラウザーズと組み合わせ。

太畝のコーデュロイ、うっとりとする色味ですね。

ゴッホ展へのトリビュートという、心意気とセンスに感服。

セットアップの多彩さを実例で示してくださいました。

素敵なブラウンのスエード靴とも調和。

 

 

 

デニム生地に上下があるように、

そうした丈夫な品はセットアップによる展開を楽しめます。

大人のカジュアルクラシック、その一つとしてホイップコード

ジャケットはもちろんトラウザーズ(ズボン)単体でもご活躍させてください。

その場合は逆に、ジャケット生地の選択で発想が膨らみます。

 

 

 

Dear Mr. Classic

I greatly appreciate your kindness.

素敵なハットにウール混紡のタイも、

秋空とじつにお似合いです。

 

 

 

 

「アルルの公園の入り口」1888

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では次なる生地とスタイリングのご案内へ〜

 

 

今季の新作

スキャバル社のスーツ生地コレクションから

Galaxy

ベージュに暖色のグラデーションが魅入ります。

こちらも実物(着分)と対面してこその出来栄え。

しかし我慢。 ´д` ;

欲しいからといって次々と手を出す余裕はございません。

生地屋さん、もう少々お待ちください。

 

 

 

こちも新作より

ハリソンズ社のフランネルコレクションが刷新。

目を付けていた品の着分が届きました。

期待が膨らみます。

 

 

↑(ピンを挿した品)が従来のグレンチェック、白黒の対比が明るいグレー色。

端正ですね。

一方で、

その下が新顔。

色味のちがい、伝わりますでしょうか。

柄は同じですが、新作の方はほんのりとベージュ色。

柔和に見えますね。

それぞれの個性をセットアップとしてご想像頂けますと幸いです。

 

新作の方が若干ウェイトが増し、420g/m。

従来が400g/mでも真冬に頼もしい品質でした。

 

 

 

色柄展開がより多彩に。

他、より現代的なニーズを取り入れた軽めのフランネル、

梳(そ)毛のコレクション 340g/mと合わせ、

二種構成が健在。

made in England

 

 

 

 

そしてダグデイルブラザーズより、

秋冬定番のコレクション

English & Town Classics

毎年欠かせません。

タフな相棒となってくれること受け合い。

時代が変わっても動じない価値観、

その指標となるひとつです。

made in England

 

 

 

400〜435g/mによる緊密さ、

ビジネススーツからカジュアル向きまで選りすぐりの構成。

品質はヘビーデューティそのもの。

しかし生地の重さと着心地の硬さは、必ずしも比例しません。

弾力ある特性、また仕立ての工夫次第で

実際の着心地はしなやかに。

 

 

 

セットアップ

まずは上下揃いのスタイリングから〜

シャツ生地にはシャンブレー織り

Giza Cotton 

タブカラーを取り合わせました。

 

 

 

衿同士を引き合せ、タイのリボンを下から浮き立たせます。

持ち出し部分はループ&ボタン留め、またはスナップ留めをご用意。

 

 

 

衿先の仕様、角を丸くする場合の加減や、

または垂れ気味にするかで印象を左右。

 

 

細かな仕様はお好みですが、

肝心なことは衿がリボンの丸みに沿うかどうか。

一着のシャツで薄手のタイから厚手のタイも許容といった、

万能選手ではございません。

その分、お気に入りのタイと相性を考慮すれば、

格別の気分転換を発揮します。

衿の開き具合、芯地の取り合わせもカスタムメイドの醍醐味。

画像の例は、ガーゼ芯を用いました。

 

 

 

ジャケットは袖付けの輪郭を柔らかに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレンチェック、グレンプレイド、

Glen(峡谷、谷間)という語源のように、本来が屋外に適した

全天候で旅の供。

 

夭折のゴッホが取り憑かれ描いた南仏アルルのみずみずしさ、

川辺の風景をはじめ水に親しみを覚えます。

 

 

「糸杉の見える花咲く果樹園」1888

 

 

では近代美術館から足を伸ばしてみましょう。

北一条通りを西へ進み、神宮の鳥居を抜けさらにさらに。

発寒川を渡ると・・・

西区西野です。

( ´ ▽ ` )ノ

 

 

 

 

 

かつて庭の老木(ほうの木)が寿命で伐採。

しかし、いつの間にか根から若木が顔を出し、すくすく成長。
生まれてはじめて、ほうの木に上から目線で語りかけます。
おまえも大きくなれよ‼

 

 

 

 

翌年、目線が同等になりました。

(;゜0゜)

 

 

 

その2年後・・・

見下ろされています。

¥(//∇//)¥

 

 

 

昭和44年当時の資料を頂戴しました。

どの街にも生き証人のような方がいらっしゃいまして、

お寿司屋さんの大将から伺うお話には、傾聴の至り。

私自身は昭和50年生まれ、親しんだ幼稚園を思い出します。

両親は昭和45年に居を構えました。

周囲は田畑や果樹園。

郊外の宅地開発がまだぽつんぽつんと、のどかだったそうです。

それから半世紀近く経ち、人の暮らしも世代交代。

時代は変わります。

 

〜高くそびえたポプラが色濃く、遠景に電信柱の列。

さらに遠く地平線上に都会のすがたがぼんやり見える。

まもなく日の沈む時刻〜

A.チェーホフ「桜の園」

第二幕より

 

 

 

セットアップの続きを〜

ジャケット単体での取り合わせです。

 

 

 

 

 

 

 

トラウザーズには、

ダグデイル ブラザーズから

コーデュロイのコレクションをどうぞ。

畝の太さで陰影にも差が出ます。

 

 

The White Rose

Corduroy & Moleskin

440g/m, 510g/m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶と想像力で絵に起こす画家の表現力、

実物を見られたことにあらためて感謝します。

青ざめた幹から天へ表出した緑の輝き、

忘れがたいものでした。

 

 

「オリーブ園」1889

 

 

 

 

ぶどう棚にて〜

今にも倒れてきそうな古木ですが、

まだまだ元気に実ってくれています。

今年も収穫がやって来ました。

 

 

〜はるか遠くで、まるで天から響いたような物音がする。

それは弦(つる)の切れた音で、次第に消えてゆく。

ふたたび静寂。

遠く庭の方では、木に斧を打ちこむ音だけがきこえる〜

 

神西 清 訳

 

 

 

 

秋の深まりとともに、いよいよ冬支度へ。

皆様もどうぞ温かく、

身近な風景から彩りの旅となれば幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ポプラ林の中の二人」1890

 

 

 

 

 

 

 

札幌元町 ノーザンテイラー

http://northern-tailor.jp/

 

 

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