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2013.10.30 Wednesday

ツイードジャケットを伴とする旅 〜親愛なる書籍のご紹介〜

 
あゝ、ダニーボーイ
山を下り、谷を越え
バグパイプの音が聞こえてきます
夏が過ぎ、花々が朽ちる中
あなたの旅立ちを、そっと見届けます

O Danny Boy,
The pipes are calling
From glen to glen and down the mountainside
The summer's gone and the all roses falling
'Tis you, 'tis you must go and I must bide 




秋の散歩、
野に山に時々出かけます。
ぼんやりしていると、もう日暮れです。
そんな中、
ふと懐かしいメロディーがよみがえりました。
大人になり、
歌の由縁を知ることがあります。
【蛍の光】がスコットランド民謡、
【ダニーボーイ】はアイルランド民謡がルーツであると。
北国の唱歌、
慕うおもいに国境はありません。

旅ごころが暖まる季節、
ノーザンテイラーの書棚より、
2013年親愛なる一冊を、ここにご紹介します。




ものづくりの伝説が生きる島
【ハリスツイードとアランセーター】
著 長谷川善美
写真 阿部雄介
2013年初版
発行 万来舎

この本を知り、世界を想像し、
感慨が生まれました。
この本を携えて、ふるさと北海道を旅します。
ツイード、その地に根ざした毛織物とは??
ますは紙面にて、
さっそくツイードの世界を訪ねてみましょう。




ハリスツイード発祥の地
“スコットランドの北西部に位置するアウターヘブリディーズ諸島。
その中でも最北に位置するのがハリス島とルイス島だ。
スコットランド最大の都市グラスゴーから
小さな飛行機に揺られて一時間余り。
空港のあるルイス島に降り立つと、
草のカーペットが敷かれた大地には、
白いワタスゲが一面に広がっていた。”

イントロダクションの書き出しです。
著者が彼の地に舞い降りる情景に、
読者はゆっくりと紙面から頭をもたげます。
風が強そうですね。
そして、古びた石垣は何でしょうか。




辺境の島
そのうえ泥炭地です。
漁業のほか、さしたる農耕は望めません。
厳しい環境に耐える毛織物づくり、
かつては自給自足の家事でした。
それが地場産業へと発展した経緯は、
ハリス島統治の歴史にさかのぼります。
越境の島
英国本土とは、宗教も言語も異なる土地柄です。
ケルト文化伝来の遺跡があります。
十字架の形象と、
ハリスツイード商標マークの関係性。
先見の明ある領主があってのことでした。
また後には、時代の波に翻弄されました。
その盛衰物語、詳しくは本書にてお楽しみください。




ひと口にツイードと言っても、
産地によって呼称が違いますね。
スコットランド本土のシェットランドツイード、
アイルランドのドニゴールツイード、
そして本書のハリスツイードというように。
これらのうち、品質上の分類や優劣は存在しません。
ひとつだけ、差別化できる点があります。
【ハリスツイード】という商標登録。
自らに規定を課しました。
島にとって、認証こそが命綱となりました。
仕入れた原毛の染色、紡績、織り加工までの工程は、
すべからくこのアウターヘブリディーズ諸島内で行うこと。
さらに、
織り手に関しての規定は特筆。
今どき、マジかよ!!
というほどの厳しさです。

機(はた)織りは木製から鉄製に変わり、
技術の進歩は生産量の倍増を可能にさせました。
変わらないことがあります。
織機(しょっき)の足踏み、またはペダルを漕ぐのは、
まぎれもなく人力。




今シーズンのハリスツイード生地
ノーザンテイラーにも反物が届きました。
その一部をご覧ください。
空の色、大地の色、
自然の風土に則した彩り。




茜(あかね)色を基調に、色とりどりの重ね格子柄
朝焼けか夕焼けか。
是非とも、
戸外の光に触れさせてください。




グリーン無地
露を含んだような、
なんともいえない質感です。
こういった生地には、
ノーフォークジャケットをお勧めします。
各所のポケット
上襟の持ち出し
背面ベルトなど、
手に触れる箇所が多いほど気分も上がります。




紙面の世界に戻ります。
これまでハリスツイードという服地の
過去から現在までの有り様(よう)を、
かいつまんでご紹介しました。
本書ではさらに、
地場産業であるその毛織物を守るべく、
未来を見据えた島の試みについても
暮らしに寄り添うかたちで記されています。

織り手の高齢化に伴う世代交代、
限りある資源の保護、
文化の伝承、
一朝一夕(せき)に解決できるものではありません。

しかしながら、
本書にはこうあります。
“家族が出来たら家に住みたいでしょう。
庭があれば羊を飼う。
それは私たちにとって普通のこと。
たとえお金にならなくても、
生活の中に羊がいるのがいいのよ。
何より、最後は食べられるしね。”

ハリスツイード協会の若きリーダーであり、
良き母でもある女性は、
豪快に笑いました。




そうです。
読んでいて、笑みがこぼれました。
おまけに、
シャアできる仲間がいると、
じっとしていられなくなりました。
旅へ出ます。
自然の中、
ツイードを着て歩きます。




道の駅には、
なにやら楽しそうな地図がありました。
今回は札幌から南西に向かいます。
沿岸をぐるっとまわり、
赤点の黒松内を目指します。
野生ブナの木、北限の地。




日本海沿岸、
かつてはニシン漁で隆盛をきわめました。
財を成した網元が岬や丘に競ってお屋敷を構え、
ニシン御殿と呼ばれました。
現在、
この一帯で要(かなめ)となるものは、
泊原発です。
周囲に不釣り合いなほど、
消防署が大きいのはそのためです。
無事を願うほかありません。




はい。
気を取りなおします。
ノーザンテイラーから、
ツイードジャケットのご紹介です。
肉厚な生地を用いました。
手触り、ごわごわです。
持つと重いです。
着れば不思議と感じません。
そこが魅力です。




ツイードの定番のひとつ、
杉綾織です。
スギの葉を交互に並べた織り柄が特徴。
またの名を
ヘリンボーンとも呼ばれます。
ニシンの骨ですね。
そういうオチでした!!




ニットタイは北海道産の毛織物
優佳良(ゆうから)織です。
誤解されがちですが、
この毛織物はアイヌ先住民族の伝統工芸とは無関係。
調べてみると、発祥は戦後です。




歴史的由緒の有無、
それが全てではないと思います。
北海道の自然風土を活かしたデザインや色彩には、
郷愁の念を抱かずにはいられません。
ナナカマド、白樺、エゾマツ・・・
身近な自然がモチーフだからでしょうね。




こうした民芸品が伝統文化となるには、
一体この先、われわれは何をすべきでしょうか。
ハリスツイードが商標登録されて100年あまり。
紆余曲折があり、存亡の危機にも瀕しました。
本書【ハリスツイードとアランセーター】を読み、
教訓とすべきことがあるとおもいます。

今回のブログ記事ではご紹介しきれませんが、
本書後篇アランセーターも同様に、
そういった示唆を与えてくれるものです。
”生活のために編む必要のない今は、
家族のためにセーターを編んでいる。
その色は白ではない。
家族のために編んでいるセーターは、
ダークブルーのものだった。”




去る七月末、
東京にて、出版記念のトークショーがありました。
偶然にも出張時とタイミングがかさなり、
私も拝聴させて頂きました。
取材エピソードの数々に、
はためく風を感じたものです。
ゆたかさとは何か??
とりもなおさず、
現代の暮らしを考えさせられるものでした。

記念にお二方のサインをしたためて頂きましたこと、
光栄に存じます。
長谷川様、阿部様、
そしてトークショーを主催されたマルキシ社様、
誠にありがとうございました。




いつか海を渡り、ツイード発祥の地を旅します。
その暁(あかつき)には、
何が開けるのでしょう。

But come ye back when summer's in the meadow
Or when the valley's hushed and white with snow
'Tis I'll be here in sunshine or shadow
O Danny Boy , O Danny boy, I love you so

また夏の草原に、戻って来てください
深しんと雪降る中でも構わない
ここにいます
陰日向(ひなた)なく
わたしのダニーボーイ



札幌元町 ノーザンテイラー
http://northern-tailor.jp/


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【ヴィジュアルブック SAVILE ROW】
合わせてご覧いただけますと幸いです。

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