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2012.06.01 Friday

その人らしさを




当店のホームページ画像より
この一枚を見て、
お気づきの方もいらっしゃることと思います。
ボタンダウンカラーのシャツに、
カフリンクス・・・ 
んん??

じつはここに、ノーザンテイラーの開業理念を折りたたんでみました。
仕込みはオッケーです!!笑

〜適材適所を把握(はあく)したうえで、お客様をお引き立てする〜

このシャツは、当店オリジナルの襟型見本のひとつ。
襟型の特徴が分かりやすいように、
シャツのヨーク(肩部)を別色にしています。

このように、襟と身頃を別生地で仕立てたものは、
旧きセパレートカラー・シャツに由来。
かつてシャツの襟は丸ごと取り外し式になっており、
傷みやすい襟や袖口を付け替えることで、
一枚のシャツをながく愛用したそうです。

英国の文芸映画には、着替えのシーンなどで見られますね。
もとは生活の知恵から発展して、
お洒落のひとつに確立されました。




資料より、社交界の競馬観戦に赴いたチャールズ皇太子。
モーニングコートは昼の正礼装。
生地は、まず黒が一般的です。
グレーのモーニングコートを意外と思われるかもしれませんが、
Society Man(社交界の紳士)のなかには、
TPOで黒とグレーを使い分けることもあったようです。

視覚的にも、野外の音楽会やガーデンパーティーなどには、
グレーにブルーの彩りが清々しいですね。

そのような由緒があり、襟と身頃が別生地のシャツには、
全体に淡いトーン(色調)でまとめた、
昼の装いが好ましいとも言えます。
ご参考までに。





では次に、
ボタンダウンカラーのシャツについて・・・
言わずと知れたスポーツシャツの代名詞。
今でこそ、至るところの量販店でも売られていますが、
私が中学生だった二十五年前までは、
アメリカントラディショナルの洋品店、
また一部のセレクトショップに限られたものでした。

ブルックスブラザーズとは、
1818年創業、ニューヨークの老舗衣料品店。
メンズクロージングのビジネスを世界規模で手がけた草分けであり、殿堂。
ラルフ・ローレンも、ルーツはここにあります。

1900年、ブルックスブラザーズが新商品を売り出しました。
それがボタンダウンカラーのシャツ。
英国のポロ競技ユニフォームからヒントを得たとされ、
風でひらひらと襟がめくれ上がらないように、
襟先をボタンで留めたもの。
商品名は【ポロカラー・シャツ】といいます。

このネーミングが決定打。
実際にポロ選手が着用していたかどうか、
真偽は定かでありません。
しかし、ポロ競技など見たこともない我々庶民にとって、
なんとも夢がありませんか。
乗馬の気分に浸(ひた)れるシャツ。
 



名画【十二人の怒れる男 1957】より
主演のヘンリー・フォンダ

ニューヨークの裁判所に召集された男たち(陪審員)が、
ひとりの反対票をきっかけに紛糾。
社会人としての通念
家庭人としての信念
最後に私人としての情念がせめぎ合う、
密室劇の傑作です。

彼の着こなしにご注目ください。
ゆったりと身体を包む、サックコート。
ナチュラルショルダーに段返りラペル、
全体に丸みを帯びたシルエットからは、
シャツの襟にも柔らかなロールが見られますね。
これが、ブルックスブラザーズに端を発する、アメリカ東部の様式美。
型番から由来して、ナンバーワン・サックスーツとも称されます。

胸ダーツを省略した寸胴なシルエットは、着手の体型を選ばない既成服の手段。
Vゾーンの第一ボタンホールが裏返しになっているところも、
3ボタン仕立てをそのまま2ボタン向けに転用した名残り。
つまりは工業製品の先進性、合理性に行きつきます。

しかし、シャツはどうでしょうか?
彼の袖口を見ますと、生地を折り返したダブルカフス仕様が確認。
これには貝ボタンでなく、金属のカフリンクスが一般的。
袖口のおさまりが厚くなるぶん、着心地の差が歴然とわかります。
それゆえ、左右手首の僅かな寸法差も無視できません。
ダブルカフス仕様とは、
すなわち旧き良き、注文仕立てを偲ばせるもの。

既成服の様式をもつスーツに、
しかし、シャツはオーダーメイド・・・
名画に観るひとりの着こなしには、そのような二律背反がありました。
彼の職業は建築家という設定です。
有形無形のデザインセンスをあわせ持つ、プロフェッショナルな男の選択。
その人らしさが、宿る装い。

十二人の男たちのどこかに、あなたがいて私もいます。

これから出逢うお客様が、
当店の服をお召しになり、
やがてそのお人柄を物語るようなシーンが生まれるべく、
ノーザンテイラーはここに幕を開けました。





札幌元町 ノーザンテイラー
http://northern-tailor.jp/

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